2015年1月15日木曜日

3ヵ月後に閉店します。

オープンしてそろそろ1年という頃、売上は予想をはるかに下回り、60~70万円を行ったり来たりしています。

最低でも100万円の粗利が必要でしたが、実際は全然足りません。
12月に一度、売上げが100万円を越えたことがありましたが、これは年賀状を扱ったからでした。

年賀状のような「季節商品」は一瞬に波が来て、あっという間に去っていきますが、この時100万円を売りながら、店頭で悲鳴をあげていました。


100万円も売ると、もう何も出来なくなるのです。
この時だけ、朝に私が駅前で撒いた「チラシ」を持って、多くのお客様に来ていただけました。
チラシを撒いて効果があるという実感が唯一あった経験です。


お昼休みの時間帯には、受付に何人かが並ぶ状況にもなりました。
これを捌くのがひと苦労です。
せっかく雇ったアルバイトは、接客が下手で、お客さんが来ると奥へ引っ込みます。

仕方がないので、私が全部受け付けます。とにかく座っている暇もないのです。


粗利で100万と考えると、本当は200万ぐらいの売り上げが欲しいのですが、100万円でこれなら、200万円なんて、到底無理なんじゃないのかと、この時に思い知らされました。

限界に近いくらい働いたとしても、生活が楽になんてならないんだと感じてしまいました。
しかも、年賀状は粗利が低いうえに、年賀状代(50円の官製年賀葉書を買っていないお客様の代金)を現金でお預かりしたりするので、いつもより現金が増えます。

印刷会社が葉書分を立て替えてくれるので、一時的に預かり金が増えているので、何となく儲かっている錯覚に陥ります。

この分は翌月にとんでもない請求が来て、またまた真っ青になります。


そして「季節」が過ぎると、お客さんはやっぱり来ません。
最高売り上げ100万円の翌月は、半分ぐらいに落ち込んでしまい、資金繰りはさらに悪化するのです。


本部への未払いは、その頃300万円を越えるぐらいになっていましたが、払えるわけも無く放置せざるを得ない状態です。
本部もある程度の責任は感じているようで、あまりきついことは言いません。

そうしたお店を多数抱えていて、本部自体の資金繰りも怪しいと言う感じでした。
他の店のオーナーさんたちとも連絡を取り合っていましたが、儲かって仕方がないよというお店は私の知る限り無かったです。



本部は、とにかく新規出店すれば、お金が回る、全てがうまく行くということで、そちらの方に躍起になっているようです。
既存店はほったらかしで、たまに来ては「支払いしてね」「ポスティングやりなさい」と、言って帰っていきます。



そして、どう考えても、もう次の月の家賃は払えないぞと、いう日がやって来ました。
そろそろお店を閉める決断をしなければいけません。


店舗を解約する場合は3ヶ月以前に言わなければならない契約でしたので、本部とも相談のうえ、閉店する覚悟を決めて大家さんに電話をしました。


「いろいろやって来ましたが、もう家賃が払えません。解約させてください。」
さらに、「今後は家賃の振込みが出来ませんので、保証金から返還される100万円を、3か月分の家賃に充当して欲しい」とも、お願いしました。

これで3ヵ月後にはお店を出なければなりません。


本部にもその旨を報告しました。
それじゃあ、お店の商品は卸した値段で本部が引き取ってあげますよ、
什器類(陳列棚やカウンター、レジスターなども含め)も、全部引き取ると言ってくれました。


これは、好意的な処置とも取れますが、本部にしては、少しでも回収しておかないと、このまま夜逃げでもされたら堪らない。と、いった思いもあったようです。


この頃はまだ、新規出店を目指す人たちも何人か候補がいらっしゃったので、商品や備品そちらに回せば、新たな仕入れが発生しないという判断だったと思います。

商品や備品は無くなりましたが、現金が増えるわけではありません。伝票上の負債が相殺されて、本部への未払いがその分だけ、減るという操作があるだけです。


あっという間に、運送会社が来て、あとまだ1ヶ月近くの猶予があったにもかかわらず、多くの商品、備品、看板までが回収されて、素っ裸のお店になりました。

もう、売る商品も無くなりました。



1週間ほど前に来て、印鑑を注文いただいたお客さんに、出来上がった印鑑を取りに来る際に店の場所がわからなくなったと、かなり叱られたりしました。

看板が無くなって様子がすっかり変わったので、解らないのは当たり前でした。
でも、折角買い物に来ていただいたお客様に、あと何日かで閉店するなんて、とても言えなかったのです。


印鑑を作る時は、縁起を担ぐという人たちも多いので、閉店していくお店に印鑑を頼むなんて、縁起が悪いと思われたかも知れないと考えると、申し訳なかったなと、今は思います。


とにかくお金が無かったので、印鑑の売上の代金1万円とかが、本当に貴重だったのです。

シャチハタの設置ケースを業者が取りに行くから抜けている不足分は補充して、お店の奥に置いておけと、社長に言われていました。

ところがお客様が買いに来られて、目の前にあるものを、売らないなんては出来なくて、仕方なく売ったところ、その直後に業者が取りに来て補充が間に合わず、社長にえらく怒られたりしました。

「新品で売るのに、いくつか抜けていたらおかしいでしょ。」と、言うのですが、
新品で売るなんて、そんなこと聞いていないし、とにかく少しでも現金が欲しかったのです。


そんな調子で、かなり切羽詰まっていました。
この頃のことを思うと本当に「ぞっ」とします。



さて、
実はこの時に、偶然やっておいたことが、後になってよかったね。と、いうことが起こっています。
長くなりますので、その話は次回に、


とにかく「船場」を離れることになりました。(つづく)

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